化学療法抵抗性に徐々に増大し、右眼有効視力を消失した5歳小児の巨大視神経-視床下部グリオーマに対して左視力を守り、腫瘍を減量するための手術を行いました。小児で出血量に制限があるため、部分摘出を計画し右前頭側頭開頭で手術を行いました。シルビウス裂を開けて脳底部に至ると、巨大腫瘍の割にはスペースを得ることができました。右内頸動脈も腫瘍に部分的に巻き込まれていましたが、剥離できました。小児でありスパスムが生じやすいので塩酸パパベリンを塗布しつつ手術を進め、右視神経は犠牲にし、左視神経を十分に減圧し、術中四肢MEP、左眼VEPの反応が保たれていることを確認して手術を終了しました。術後覚醒は良好でしたが、暴れるためICUで鎮静しました。翌日、左手足の麻痺が出現し右中大脳動脈の大きな脳梗塞が確認されました。術後1週間のバルビタール麻酔療法、その後外減圧術、さらに脳室ドレナージ、VPシャント術と立て続けに脳圧、髄液管理を行いました。術後1ヶ月してようやく、会話や食事、リハビリができるようになってきました。この30年間で3件ほどしか経験はありませんが、小児腫瘍における脳血管攣縮はいまだに予想困難な合併症です。
右内頸動脈の血管攣縮と術後脳梗塞
バルビタール麻酔、外減圧術、脳室ドレナージ、VPシャント術と立て続けに脳圧低下処置を行い、術後5週間でようやく自分で食事をとるところまで改善。今後まだまだ治療とリハビリが続きます。