1年間で増大した有効聴力を喪失した右聴神経腫瘍を手術しました。腫瘍は比較的小さく、比較的短時間で終わりました。聴神経は起始部で切断しました。外視鏡を用いて仰臥位で手術することでセットアップも短時間で終わることができ、かつ術中CTも活用できます。

Cereberomedullary cisternを開放し、Juglar dura(横縞)を確認。Tonsilを手前に牽引し、Juglar dura、舌咽神経、VAを確認。まずIX-XI周囲のくも膜を剥離し、脳幹起始部まで露出しました。本例はTonsilが発達していて大きく、延髄がなかなか見えませんでした。その後硬膜を開け、二重になったくも膜の一層目を剥離して腫瘍表面に張り付いている錐体静脈をよけ、Suarcuate arteryは切断して腫瘍から剥がしました。1mAで顔面神経の反応がない部分の皮膜を切開しRim-cut/rim-coag(円形に皮膜を凝固、バイポーラーを突き刺す:焼き鳥法)を行い、内減圧しました。

ある程度内減圧ができたら内耳道を開放。今回はFovea(=endolymphatic sac=post SCC)より内側で削除しましたが、聴神経を切断するのであれば最初からFoveaの上から削除してもう少し大きく削除したほうが良かったと思いました。術中CTで見るとまだまだ削れました。また正中側(内側)の開頭ももっと大きくした方が内耳道底の観察が容易になったと思います。内耳道硬膜を切除し、内耳道から脳幹までハンマー型に腫瘍の全貌を露出しました。内減圧を再開し三叉神経を露出。

右聴神経のABRは最初からV波が検出されていませんでした。聴神経を切断し、中間神経と顔面神経を辿って、腫瘍にくっついているところまで切除。内耳道内腫瘍をLateral to medial dissectionしましたが内耳道腫瘍はまだ摘出が可能だったかもしれません。顔面神経麻痺が出てしまっては元も子もないのでこの程度で良かったのかもしれません。Last 10mmは三叉側、聴神経側を少しずつこそげ落とし、顔面神経は最後まで0.2mの反応が保たれていました。

術後、めまいなし、耳鳴なし、顔面神経麻痺なし、創部痛は術当日は強かったですが、翌日よりずいぶんましになりました。ICUに一日入っただけで、2日目よりテレビを見るなど回復が早く、現時点で髄液もれもありません。